それでも傍にいたくて
「わぁ…っ」
どうやら蒼空は屋台のりんご飴に夢中だ。
「食ったことねぇの…?」
僕は蒼空の眺めているりんご飴を見て聞いた。
「まさか…あるよ?でも、このりんご飴…すっごく大きくて…初めて見たから」
そう言って笑う彼女は、そのりんご飴を買うかどうか迷っているようだ。
「500円かぁ…うーん…」
「……ははっ、食いたいのなら奢るよ?」
そう言うと蒼空は目を輝かせたが、少し間をおいて首を横に振った。
「いい、自分で買うよ」
「なんで?」
「そういうのは…彼女にしてあげるべきだと思うから」
そう言うと蒼空は、視線を僕から屋台のおじさんに移し「大きいりんご飴ください」と笑顔で言っていた。
彼女…?
僕に彼女がいたのなんて中学の頃だけで今はフリーだ。
蒼空は僕に彼女がいると思ってるのか…?
蒼空に勘違いされていると思うと、なんだか胸のあたりがもやもやした。
「大地君」
いつの間にかりんご飴を手にもった蒼空が僕の顔を覗き込んでいた。
「あ、な、何…?」
「えと…ぼーっとしてたから…」
どうやら僕がぼーっとしていたのを心配してくれたらしい。
「ごめんな?なんでもないからさ、行こう?」
何でもなかったように笑い、僕は蒼空に手を差し出す。
「人混みではぐれたらいけないからさ、手、繋がない?」
そう言うと蒼空は嬉しそうに笑い、僕の手を取って僕らは歩き出した。