それでも傍にいたくて
蒼空の秘密
「あの…大地君……今…」
くりくりした目に僕の姿を映し、ほんのりと赤くなった頬に僕は手を添える。
「好きなんだ……蒼空、君のことが」
「大地君……」
蒼空は何かを言おうとして俯く。
「蒼空……?」
「場所……変えよう?」
俯いたまま静かに言い、僕の手を引き人気のない道へと入っていく。
「蒼空……」
僕に背を向けたまま蒼空は話し出す。
「大地君…大地君の気持ち、すごく嬉しい。私も大地君のこと…大好き…。でも…」
でも…そう言って彼女は黙ってしまう。
少し間をおいてこちらを振り向くと蒼空は切ない顔をしていた。
「ごめんなさい…、私は大地君といられない…」
「そっ……か…」
でもね、と蒼空は続ける。
「私は……許されるのなら、こんなんじゃなかったら…一緒にいたかった」
「え……?」
許される…?
こんなんじゃなかったら…?
蒼空は何を言っているんだ……?
「私ね……心臓弁膜症なの」
「心…臓……?」
心臓…?弁膜…?
誰が……蒼空が……?
「そう、心臓。二年前に突然発症したの。原因は特定できなかった。先天性のものや、後天性のものならまだしも…特定できない分、不安が大きかった」
蒼空は静かに語りだした。
蒼空の瞳にはさっき花火を見ていた時のような輝きはなかった。