それでも傍にいたくて
彼女の名前は、藤田 蒼空(ふじた そら)。
同じクラスだけど、あまり話したことはない。
…というのも、彼女は校内でも1.2位を争うほどの人気者。
成績優秀、けどそれを鼻に掛けない謙虚さと、ふんわりとした優しい顔立ちで、女子にも男子にも好かれている。
栗色のボブヘアーは彼女のお兄さんがしたんだとか…。
そんな彼女を狙う男子は沢山いるが、彼氏がいるという話は聞いたことがない。
可愛いのにもったいない…。
そんな人気者の彼女とごく普通、まるきり平凡チックな僕が会話できてるのは奇跡に等しいとすら思える。
「九条君…って、サッカー部なんだよね?」
「…うん……ってなんで知ってんの?」
正直驚いた。
クラスであまり話さない一男子の部活を、彼女が知っていたことに。
嬉しさがこみ上げたが、自分がユニフォームを着ていることに気づき、何とも言えない気分になった。
……が。
「知ってるよ」
「…え?」
「九条 大地(くじょう たいち)君、同じクラスでサッカー部。
ポジションはDF(ディフェンダ―)で、副キャプテン。
テストの成績は…うん。でも、優しそうなイメージ…。
誕生日は5月5日のこどもの日で、血液型はB型…」
すらすらと僕のデータを口にする彼女に僕はただぽかんとしていた。