それでも傍にいたくて

夏休み



藤田 蒼空に名前を呼んでもらえた日から早くも一週間。


あの日から僕の頭の中では彼女のことでいっぱいだった。



僕のことを細かに知っていてくれたこと、名前で呼んでくれたこと、まぶしいくらいの笑顔。




言葉にしたら、本当にモテない男の感情とすらとらえかねる。






「たーいち…!」


「……おわ…!」


頬杖をついてぼーっと黒板を眺めていたら、目の前でぱんっと両手で音を立てられ僕は吃驚してひっくり返った。




その様子を見ていたクラスの連中はどっと笑う。




「…ったく、何すんだよ海…」




僕は腰をさすり立ち上がると、倒れた椅子を戻し座りなおす。





「お前がぼーっとして話きいてねぇからだろ?」



「…話?」



「明日から夏休みだから、練習の後みんなでどっか行こうって話だよ」



そういえばそんな話もしていたような気がする。



「あー…それで?」



「じゃん!ここに決定しました!!」



得意げにぴらっと広告を僕の前に広げる海は子どものようにはしゃいでいた。



「うわ…。ここって最近できた遊園地じゃん!」



「そうなんだよ!誠也がさ、お前ならぜってぇ嫌がるからここにしようって!」




遊園地を提案した誠也の顔が目に浮かぶ。


「お前、絶叫系苦手だもんなー。ここは絶叫系のオンパレードだし!」



「最悪だ…」



そう、僕は絶叫系が大の苦手。

ガキの頃木登りをして過って落ちて以来、高いところが苦手になり、絶叫系は高いところから急降下するから大っ嫌いだ。



項垂れる僕をくすくす笑う声が後ろから聞こえてきた。




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