片想い日記
本編
7月
ふっ、と読んでいた本から顔を上げた。
教室で、数人の男子が追いかけっこをしていた。
そのうちの1人が目に止まる。
小枝潤。
かわいい顔立ちの悪戯っ子というのがもっぱらの評判。
私も見てる分には楽しくて、観賞用だな、なんて上から目線で思ったりする。
でも小枝君は、あれですっごく口が悪くて気分屋。
その上、テニス部が多いこのクラス、テニス実力者の小枝君は、発言力が強い。
だからやっぱり、関わらないで外から見てるのが1番いいのだ。
がたんっ
小枝君を追いかけていた大林が私の机にぶつかる。
「ぉっと。わりぃ鷹谷。」
がたがたっと机を直してさっさと走り出す大林。
大林は私に気安く話しかけてくれる、数少ない男子の1人だ。
別段大人しくしてるつもりはないけど、
暇さえあれば本を読んでいるのがいけないらしい。
男子はみんな、大人しすぎる私には話しかけない。
というか、存在を認知されてない気がする…
うん、やっぱり彼氏とかって話なら小枝君より大林かな。
大きいから抱き付けるし。
私は、ぽやーっと考えるとはなしに思って、また本に目を落とした。