届かないラブレター


暗いからよく見えないが、人が倒れているのがわかる。



奈子とぶつかった自転車の人はいつのまにかいなくなっていた。



「奈子、起きれるか?しっかりしろ!くそっ!」



俺は奈子が起きないのではないか、と不安な衝動に駆られた。



しかし彼女は、



「いててて」



と言って、何事も無かったように立ち上がった。



思わず安堵のため息がこぼれる。




「はぁ」



「な、なんで怒ってるの!?」



ため息をついたから怒っているのだと勘違いしたらしい。




焦り出す彼女を見て笑みがこぼれる。



「ったく心配させんなよ。」







俺は自分を地獄へ突き落とした人間を、不覚にも守ってやりたいと思ってしまった。






<隼人sideおわり>
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