甘い誘惑~Sweet Refrain~
南方さんを解放させるためにも、あたしは上手に彼の浮気相手を演じればいい。

あたしは自分に言い聞かせた。

「いつの間にか、しかも短い間に」

そう言った南方さんに、
「違うよ」

愛莉さんが言った。

「藤――彼と一緒になったのは最近だけれど」

話を区切るように愛莉さんは口を閉ざすと、
「彼の方が長かったよ」
と、言った。

「片思いの時間では、藤の方が長かったよ」

そう言った愛莉さんに、
「――そうか」

南方さんは返事をすると、出口の方へと向かった。
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