甘い誘惑~Sweet Refrain~
店員がいなくなると、あたしはあのことを思い出した。

南方さんの婚約の話である。

「あの…」

南方さんの顔を覗き込むと、あたしは声をかけた。

「どうかしたの?」

そう聞いてきた南方さんに、
「婚約のことなんですけれど…結局、どうなったんですか?」

あたしは聞いた。

「ああ、そのことね」

南方さんはやれやれと言うように息を吐くと、
「別れることになったよ」
と、言った。

「そうですか…」

呟くように返事をしたあたしに、
「フミちゃんのせいじゃないよ」

南方さんが言った。
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