地獄で咲いた愛の花

呻くように紡がれた言葉。

白良は唐突過ぎて、キョトンとした表情をしている。


「しら、つゆ…さん?」

「………っ!」


戸惑うように揺れていた金色の瞳が、彼女の呼びかけによって我に返る。


(我は……今、一体何を考えていた…?)


白露の頭の中に、泣いている白良と慰める和矢の姿が浮かぶ。


(………下らぬ)


血を、好んだ。

傷口から滴り落ちる紅の鮮血は美しく、何よりも好ましい。

愛でたい。

独占したい。

白露にそう思わせる唯一のモノ。

しかし、なぜかそれと同じような感情を白良の涙に見出だしてしまった。


愛でたい。

独占したい。

甘美な涙。


(一瞬の気の迷いか…)


それとも――。


「ふっ…下らぬ」

白露は静かに笑った。

白良と視線を交わしたまま、ゆっくりと彼女の頬を撫でる。


(涙など、亡者どもので見飽きたわ)


彼は少女を見つめながら、己の心に言い聞かせたのだった。

まるで、言い訳のように。




 
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