地獄で咲いた愛の花



 白良の家に戻ると、玄関前に人がいた。

「宗二くん?」

昨日来た兄弟の弟の方が白良の帰りを待っていた。

「これ、かず兄が白良にって」

彼は笹の葉に包まった何かを白良に手渡した。

それから、被衣をかぶった白露をちらっと確認して言った。

「まだいたんだ。旅人さん」

「いてはまずいか?」

偉そうに言う白露を宗二は睨みつけた。

「わあ、お団子だ!ありがとう宗二くん!」

大のお団子好きな白良。

その喜びようは半端ない。

「べつに…礼ならかず兄に言えよ」

「和矢くんは仕事?」

「ああ、だから俺が持ってきたんだ」

白良はもう一度彼に感謝の言葉を述べた。

「家に寄ってく?」

何気なく聞いた白良の隣で白露は嫌そうな顔をした。

「いや、もう帰る」

さっさと白良に背を向ける宗二。

白露は射殺すような視線で鼻持ちならない男の後ろ姿を見送った。


 
< 30 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop