地獄で咲いた愛の花
白露は助けを請う亡者達を蹴り飛ばしながら、グツグツと煮えたぎる大釜の横を通り過ぎ、人間達が堕ちてくる穴に向かった。
そこが人間達の住む世界に一番繋がりやすい。
「さて…次に堕ちてきた奴にするか」
持っていた黒染めの被衣(カズキ)を頭から被り、彼は待った。
穴からは一日に何百という数の人間が堕ちてくる。
白露は今、目の前に堕ちてきた女の亡者の腕を掴み、顔を覗き込んだ。
その女は地獄にやって来た恐怖も忘れ、白露の美しさに見惚れた。
「我は人間の世界に行く。そなたの闇を曝すがいい」
白露はそう囁くと女の心臓を手で貫いた。
悲鳴をあげる亡者。
その叫び声を聞きながら、彼は女の心の闇に入り込み地獄から姿を消した。