地獄で咲いた愛の花
「もうそなたに用はない」
白露は一瞬のうちに椿の心臓を手で貫いた。
彼女の胸に赤黒い穴が空く。
「地獄で、会おうぞ」
苦しみもがきながら椿はいやらしく笑った。
「ま、だ…終わって…な」
白露は女の最期の言葉に耳を傾けた。
「けい…か、くは…ま、だ…」
――終わっちゃいないのよ
言い終わることなく椿は死んだ。
白露は死体をその辺に捨てると、彼女の最期の言葉の意味を考えながら白良のもとへ戻っていった。
家に戻った白露に千尾丸が飛び付いてきた。
「旦那~!!大変ですよ!!白良がっ!!」
千尾丸の慌てように、嫌な予感しか感じられない。
白露は急いで白良に駆け寄った。
「どうしたのだ!?」
目をきつく閉じ、苦しそうに喉を押さえる白良。
「それが、さっき貰った団子を食ったら白良が!」
「何…!?」
白露は気づいた。
「毒か!くそっ!あの女!!」
端から白良を殺す気だったのだろう。
椿の計画は上手くいったのだ。
「白良!我を見ろ!白良!」
「…し、ら…つゆ…」
うっすらと開かれたまぶた。
涙を流し、囁かれた名前。
それが、最期だった。
白良は静かに息を引き取った。