好きみたいです××さん
もともと、好きになるとか好きにならないとかそういう対象には、私はお兄さんに相応しくなかった。
だからと言って、この気持ちを、このモヤモヤしたまま抱えているのはなんだか違うような気がした。
「お兄さん……」
お兄さんの私の腕を掴む手の力が緩んだ。
私はお兄さんの方を向く。
お兄さんは少し動揺しているような、焦っているような、表情を見せた。
「私、お兄さんのこと好き。」
私はできるだけ明るくそう言ってにっこりと笑った。
たちまちお兄さんの表情が驚いたようなそれに変わった。
「お兄さん、ありがとう。それじゃあ、またね。」
ガチャリと半ば強引にお兄さんの部屋を後にする。
閉まるドアの間から、私を呼ぶお兄さんの声が聞こえたような気がした。
もう、私がお兄さんと関わる事なんてないんだろうな。
そう思うと今まで我慢していた涙が溢れてしまいそうだった。
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