好きみたいです××さん
私は、お兄さんの一言一言、一つずつの仕草に反応してしまう。
お兄さんがはにかめば私の心もあったかくなるし、悲しめば私の心も冷たくなる。
恋って今までよくわからなかったけど、そういうものなんだって今なら分かる気がした。
お兄さんのおかげで少し大人になれたような気がしたんだ。
私はお皿に残ったデミグラスソースをフォークでかき混ぜながら、テーブルの上で揺れる蝋燭の火をボウッと眺めた。
当のお兄さんはというと、私を背にしてシステムキッチンで自分の使った食器を洗っていた。
カチャカチャと軽快な音が聞こえてくる。
その後ろ姿に好きという言葉を重ねたくなる。
その時、部屋の照明が二、三度チカチカと音を鳴らして戻った。
「あ、復旧したみたいだね。良かったな〜。」
お兄さんは安堵の声を漏らした。
「そう、ですね。」
確かに先ほどまで窓に打ち付けるように降っていた雨も、雨脚が引いたのかシトシトと静かな音色を奏でていた。
私はこの時間がもう終わってしまうのを、示唆しているようで複雑な気持ちを抱えていた。
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