ファインダーの向こう
(里浦が“渡瀬会”と繋がってるなら、そのルートでルミがクスリを入れた可能性は高い……)


「だから、沙樹ちゃん……これ以上、君一人であの組織を追うのは個人的にはおすすめできない、でもネタとしてはかなり大物だよねぇ……“渡瀬会”の密売実態とは!? なぁんてさ」


「……私、“渡瀬会”を追います。写真に真実を収めて……だって、写真は嘘をつきませんから」


 波多野はコーヒーを飲み干すと両肘をつき、組んだ指に顎を乗せてニンマリした。


「だったら、逢坂と行動を一緒にするといい」


「え? 逢坂さん……?」


「あいつも“渡瀬会”を追ってるからね、僕としてもそうしてくれると安心だよ。あんな性格だけど、なんせ僕はあいつが刑事だった頃からの知り合いだからね、付き合いは長いよ」


 沙樹は波多野の口から逢坂の過去を聞かされると、逢坂のことについてその先も知りたいという思いに駆られた。


「逢坂さんって……刑事だったんですか?」


「うん、でもこの話は逢坂にとって地雷だからあんまりしないでやって」


「……はい」


 やんわりとこれ以上は聞かないでくれと言われた気がして、胸に燻りを覚えつつも沙樹は口を噤んだ。


「まぁ、“渡瀬会”のことなら、三階の資料室に行けば何かわかるかも知れないよ、あそこには過去の記事原稿が保管されてるから」


「わかりました」


「あぁ、もうこんな時間だ。僕は先に仕事に戻ってるね」


 波多野がいなくなった向かい側をぼんやりと見つめながら、沙樹は逢坂のことを考えていた。


 言われてみれば勘の鋭さと、優れた洞察力は刑事時代の賜物たったのかもしれない。


(でも逢坂さんの身に一体何が……)


 沙樹は夕暮れを背に早る気持ちを抑えて、資料室へ向かった―――。
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