ファインダーの向こう
「もしかして、父が死んだ原因って“渡瀬会”と関係があるんじゃ……」


「……くそ」


 逢坂が小さくぼやくと、叩きつけた拳を壁からずるりと下ろして沙樹に背を向けた。


「お前、変に勘が良すぎてムカつく」


 肩ごしに振り向くその口元は諦めたように少し笑っていた。


「俺は、渡瀬龍馬とその専属秘書の間にできた私生児だ」


「え……?」


「表沙汰にならないように母親はすぐに捨てられ、しばらくして俺は施設に追いやられた。なにもかも失って絶望してたそんな時に、倉野先生……お前の親父に出会った。そして、何もなかった俺に写真を教えてくれた」


 逢坂は沙樹に向き直ると、当時を思い出したのか、先程とは違って柔らかい表情を浮かべていた。


「そう、だったんですか……」


「けど……」


 再び逢坂の顔が曇って、小さく唇を噛むと言った。


「先生は鼻摘みものだった俺の存在を“渡瀬会”が消そうとしていることに気がついて、消される前に“渡瀬会”の闇取引を暴こうとしたんだ。俺は何度もやめさせようとした。けど……その当時の俺は無力すぎるほど無力だった」


「逢坂さん……」


「お前が必死になって神山ルミを助け出そうとしてる姿が、ムカつくくらい過去の自分とリンクした」


 逢坂が過去を語る度に胸を抉るような感覚が伝わってきて、目頭に熱を持ち始めた。


「ある日、先生が行方不明になって……それから車の中で遺体が山の中で見つかった。このことはお前も知ってるだろ?」
 
< 120 / 176 >

この作品をシェア

pagetop