ファインダーの向こう
(逢坂透……か)
逢坂が実際どんな人物なのかと悶々としながら、沙樹は新宿の街を歩いていた。
秋の日は釣瓶落としというが、夕刻でももうすっかり薄暗くなってしまっていた。ふと時計を見ると、ルミとの約束の時間まで数時間あった。
その時―――。
顔を上げた瞬間、沙樹の目が人ごみの中を横切る人影を捉えた。
(っ……あれは、まさか―――里浦隆治!?)
仕事で培ってきた動体視力と勘が、間違いないと沙樹の脳裏に告げていた。一眼レフはかさばるため、いつも持ち歩いているコンパクトなデジカメをバッグの中で漁りながら沙樹はその影を追った。
(間違いない、あれは里浦隆治だ)
周りの目を引かないように変装していたが、沙樹はその人物が里浦本人であることを確信した。歌舞伎町の雑踏の中に、今にも消え入りそうな里浦の後を追って、沙樹が薄暗い角を曲がろうとしたその時―――。
「やめときな」
不意に肩をぐっと掴まれたかと思うと、声を潜めた低い声が背後からして沙樹は息を呑んだ。
逢坂が実際どんな人物なのかと悶々としながら、沙樹は新宿の街を歩いていた。
秋の日は釣瓶落としというが、夕刻でももうすっかり薄暗くなってしまっていた。ふと時計を見ると、ルミとの約束の時間まで数時間あった。
その時―――。
顔を上げた瞬間、沙樹の目が人ごみの中を横切る人影を捉えた。
(っ……あれは、まさか―――里浦隆治!?)
仕事で培ってきた動体視力と勘が、間違いないと沙樹の脳裏に告げていた。一眼レフはかさばるため、いつも持ち歩いているコンパクトなデジカメをバッグの中で漁りながら沙樹はその影を追った。
(間違いない、あれは里浦隆治だ)
周りの目を引かないように変装していたが、沙樹はその人物が里浦本人であることを確信した。歌舞伎町の雑踏の中に、今にも消え入りそうな里浦の後を追って、沙樹が薄暗い角を曲がろうとしたその時―――。
「やめときな」
不意に肩をぐっと掴まれたかと思うと、声を潜めた低い声が背後からして沙樹は息を呑んだ。