ファインダーの向こう
 抵抗する沙樹の手を捉えながら、新垣は獰猛な唇を押し付けた。そしてそのまま壁まで追いやると、沙樹にもう逃げ場はなくなった。


「んんっ」


 今までせき止めていたと言わんばかりの口づけの勢いは、どんどん熱を増して沙樹の口腔を犯していった。唇の端から唾液が伝っても、それを拭うことすら許されない。


「すっげ、倉野さんの唇……柔らかくて、あったかい……オレ、ずっとずっと憧れてたんです。だから……逢坂さんなんかに渡さない……好きなんです。倉野さん」


 熱に浮かされながらの新垣が告白は、真っ白になった沙樹の頭の中には入ってこなかった。


(やだ……やめて……!)


「っ!?」


 固く目を閉ざしていると、急に胸元に冷たい空気が触れた。沙樹が恐る恐る目をやると、寛がせられた胸に新垣の手が這っているのが見えて悪寒が走った。


「ひッ! ……んぅ」


 声にならない悲鳴をあげそうになった時、その声を塞ぐように口づけられる。


「倉野さん……倉野……さん、駄目なんですよ、逢坂さんの傍にいたら危険なんだ……オレは、倉野さんを守りたい……だから―――」


 素肌を這う新垣の手が、中途半端に生ぬるくて気持ちが悪かった。下着から覗いた膨らみの部分に、荒く息づいた新垣が口づけを繰り返している。


「オレは逢坂さんが嫌いだ……あんなやつ、いなくなればいいんだ……知ってますか“渡瀬会”が逢坂さんを消そうと水面下で動いてること」


「え……?」


「“渡瀬会”が裏で何やってるかなんて、倉野さんならとっくに気がついてるでしょ? 海外から輸入してる葉っぱ、あれって全部脱法ハーブなんですよ、オレも色々調べましたから」


 動きを封じられて迫り来る恐怖に身体が小刻みに震えている。そんな様子を新垣は、ただニヤリと笑ってひたすら沙樹の身体を貪った。


「逢坂さんを消すなんて、そんなこと絶対させない!」


 乱れた胸元をたぐり寄せると、眦を上げて新垣を睨んだその時―――。
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