ファインダーの向こう
緊張したその場の空気を割るように、新垣の携帯が鳴った。新垣は携帯の画面表示を見ると、小さく舌打ちをして携帯を耳にあてがった。
「はい……。い、いえ、まだ……そ、それは―――」
何かにとり憑かれているのではないか、と思うほど我を失っていた先程とは違い、新垣は電話で話しながら時折どもり、目を泳がせている。
「そんなこと……オレにできるかわかり―――」
「うーん、君を思ったより使えない人間だね」
「っ!?」
ドアが開き、数人の黒服の男を引き連れて部屋に入ってきやのは、新垣と携帯で繋がっている相手、渡瀬光輝だった。
渡瀬は携帯を切ってポケットにしまうと、沙樹に気づいてにっこり笑った。
「ふぅん、君が噂の倉野沙樹さんか……初めまして、渡瀬光輝と申します」
初めて見る渡瀬は思ったよりも背も高く、高貴な雰囲気の中に決して油断できないような空気を身にまとっていた。沙樹が思わず放心していると、不意に顎をとられて上向かされた。
「気が強そうで、よく見ると綺麗な顔をしてる……私の好みだ」
「いやっ!」
黒い沼を思わせるような渡瀬の瞳から、沙樹は勢いよく顔を背けた。
「ふふ、なかなか楽しめそうだね……やっぱり、こんなくだらない男に君みたいないい女を渡すのが惜しくなってきたな」
渡瀬は目を細めながら沙樹の乱れた胸元を舐め回すように視線を這わせた。
(や、やだ……)
沙樹は見られている不快感に身体を咄嗟に掻き抱いた。
「はい……。い、いえ、まだ……そ、それは―――」
何かにとり憑かれているのではないか、と思うほど我を失っていた先程とは違い、新垣は電話で話しながら時折どもり、目を泳がせている。
「そんなこと……オレにできるかわかり―――」
「うーん、君を思ったより使えない人間だね」
「っ!?」
ドアが開き、数人の黒服の男を引き連れて部屋に入ってきやのは、新垣と携帯で繋がっている相手、渡瀬光輝だった。
渡瀬は携帯を切ってポケットにしまうと、沙樹に気づいてにっこり笑った。
「ふぅん、君が噂の倉野沙樹さんか……初めまして、渡瀬光輝と申します」
初めて見る渡瀬は思ったよりも背も高く、高貴な雰囲気の中に決して油断できないような空気を身にまとっていた。沙樹が思わず放心していると、不意に顎をとられて上向かされた。
「気が強そうで、よく見ると綺麗な顔をしてる……私の好みだ」
「いやっ!」
黒い沼を思わせるような渡瀬の瞳から、沙樹は勢いよく顔を背けた。
「ふふ、なかなか楽しめそうだね……やっぱり、こんなくだらない男に君みたいないい女を渡すのが惜しくなってきたな」
渡瀬は目を細めながら沙樹の乱れた胸元を舐め回すように視線を這わせた。
(や、やだ……)
沙樹は見られている不快感に身体を咄嗟に掻き抱いた。