ファインダーの向こう
 沙樹が慌てて逢坂に寄ると、逢坂が異様なまでの拒絶を示した。


「俺の前でそいつの話すんな」


「あい、さか……さん」


「お前、そんな話するためにここに―――っ」


 沙樹を睨むと、逢坂がある一点に目を留めて小さく息を呑んだ。


「なんだよ……この首筋の痕」


「え……?」


 首筋に注がれている険しい視線に、沙樹は先ほどの記憶が脳裏を掠めた。あの生ぬるい感触と肌を啄む感覚を思い出して沙樹は身震いした。


「こ、これは……」


「さっき光輝に会ったって言ってたな? あいつがやったのか?」


 逢坂の瞳の奥に嫉妬の焔が揺らめいて、沙樹はごくりと喉を鳴らした。その憤りの原因が嫉妬であればいい、と不謹慎にもそんなことを願ってしまう。


「これは、その……不可抗力で……きゃ!」


 ふわりと身体が浮かんで腕を掴まれたかと思うと、いきなり視界が反転してソファに倒れ込んだ。


「言えよ、光輝にやられたんだろ?」


「……そうですよ」


「く……そ」


 ぐっと手首を掴む手に力がこもる。爪が食い込んで今にも皮膚を破りそうだ。けれど、沙樹はそんな痛みさえも喜びに感じていた―――。
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