ファインダーの向こう
先程よりも雨の勢いが増し、窓ガラスを叩きつける音が静寂の部屋に響き渡っている。ソファに押し倒されたまま、沙樹は抵抗もせずに逢坂を見上げた。寒さのせいか、この状況に緊張しているのか、手首を掴む逢坂の手が微かに震えていた。
お互いに視線を絡ませ合い、見つめ合って、そして睨み合う。
「俺はお前のその生意気な目が……気に入らない」
「私は逢坂さんの何も言ってくれない目が……嫌いです」
だから気づけば惹かれていた―――。
人を愛するということは、そんな小さなきっかけが始まりだったりする。なぜ好きなのか、なぜ気になるのか、なぜ目で追ってしまうのか、そんなことさえ自分でもわからない。ただ、同じ時間を共有したいと近づいては傷つけられての繰り返し。
(それでも好きって思えるのが不思議……)
「沙樹……」
初めて呼ばれた自分の名前に紅潮して、沙樹が小さく返事をする。
「こんな世界一馬鹿な女、お前が初めてだ」
「なんですかいきなり……」
「そういう女ほど見てて飽きない」
いつの間にか緩められた手首から力が抜け落ちる。沙樹の頬を優しく撫でると逢坂は目を細めて笑った。
「……怖かったんだ」
「え……?」
静けさの中でたったひとこと、逢坂の声とは思えないほどの小さな呟きが聞こえた。
「お前が俺に近づけば近づくほど、離れれば離れるほど……。それに、倉野先生を殺したのだって―――」
柔らかい面持ちから険しい表情に一変すると、逢坂は言葉を一度呑み込んだ。
「渡瀬光輝ですよね?」
逢坂の代わりに沙樹がその名前を口にすると、逢坂が目を逸らして顔を曇らせた。
「……あぁ」
お互いに視線を絡ませ合い、見つめ合って、そして睨み合う。
「俺はお前のその生意気な目が……気に入らない」
「私は逢坂さんの何も言ってくれない目が……嫌いです」
だから気づけば惹かれていた―――。
人を愛するということは、そんな小さなきっかけが始まりだったりする。なぜ好きなのか、なぜ気になるのか、なぜ目で追ってしまうのか、そんなことさえ自分でもわからない。ただ、同じ時間を共有したいと近づいては傷つけられての繰り返し。
(それでも好きって思えるのが不思議……)
「沙樹……」
初めて呼ばれた自分の名前に紅潮して、沙樹が小さく返事をする。
「こんな世界一馬鹿な女、お前が初めてだ」
「なんですかいきなり……」
「そういう女ほど見てて飽きない」
いつの間にか緩められた手首から力が抜け落ちる。沙樹の頬を優しく撫でると逢坂は目を細めて笑った。
「……怖かったんだ」
「え……?」
静けさの中でたったひとこと、逢坂の声とは思えないほどの小さな呟きが聞こえた。
「お前が俺に近づけば近づくほど、離れれば離れるほど……。それに、倉野先生を殺したのだって―――」
柔らかい面持ちから険しい表情に一変すると、逢坂は言葉を一度呑み込んだ。
「渡瀬光輝ですよね?」
逢坂の代わりに沙樹がその名前を口にすると、逢坂が目を逸らして顔を曇らせた。
「……あぁ」