ファインダーの向こう
「お前の笑顔は俺が守る……」


「……それって、私が逢坂さんの恩師の娘だからですか?」


 沙樹は少し上目遣いで逢坂を見た。まるで子供のような表情に逢坂がくすりと笑って沙樹の腕を取ると、沙樹の身体を覆い尽くすように抱きすくめた。


「馬鹿……そんなわけないだろ」


「私、怒ってるんですよ? 前に私がルミのところへ行った時、逢坂さん本気で私のこと怒ってましたよね? あの時の逢坂さんと同じくらい私、怒ってるんです。どうして波多野さんと電話した後、私も連れて行ってくれなかったのかって」


 沙樹は何もかも知っていたのだと悟ると逢坂は、目を丸くした表情を力なく和らげた。


「ほんと、抜け目ない女……」


「逢坂さんが私を置いて出て行ったあと、波多野さんに連絡を取ったんです。それから森本さんにも協力してもらって、やっと渡瀬龍馬を連れ出すことができたんです……渡瀬光輝に一番効果のある人物は誰かって考えたら、彼しか考えられなかった」


 逢坂を助けたい一心で胃の中を荒れ狂うような焦燥感に耐え、沙樹は深夜にも関わらず寿出版の資料室へ行き、渡瀬光輝が過去に受けた取材記事全てに目を通した。そして今までに自分が取材をしてきた勘を頼りに渡瀬光輝という人物を分析した。


 その結果―――。
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