ファインダーの向こう
 沙樹は自分の勝手な思い込みに、足のつま先から熱湯が遡ってくるような感覚を覚えた。


「お前の気持ちに応えなかったのも、抱かなかったのも……全てに決着がついてからって、そう決めていた。くだらない男の勝手なプライドだ。許せ」


「逢坂さん……」


「でも今なら言える……お前のこと、愛してる」


 まるで熱い鉄の矢に心臓を射抜かれたような感覚に、沙樹はその愛おしさに胸が締め付けられた。


「逢坂さん……私も、私も逢坂さんが好きです。世界一、愛してます」


「な、なんか……改めて言われると……照れるな」


 恥ずかしさに耐えかね、視線を逸らそうとした逢坂の両頬を包み込むように手を添え、沙樹は自らもう一度自らの唇を重ねた―――。
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