ファインダーの向こう
「さぁ……なぁんて、ことはないでしょ? しっかり首筋に愛の印がついてるよ?」


「え!?」


「うーそ、あっはは」


 今朝、沙樹は逢坂のマンションからの出勤だった。朝からベッドで絡み合っていたことは誰にも話していなかったが、あまりにもリアルタイムすぎて沙樹は墓穴を掘ってしまった。


 沙樹……愛してるよ―――。

 こっち向けって、その表情……ゾクゾクする―――。


 お前のその可愛い声聞いてたら……すぐにでもイっちまいそうだな―――。


「っ!?」


「どうしたの? ゆでダコみたいな顔して、はは~ん、さては昨晩のあっつぅ~い夜のことでも思い出した?」


「ち、ちちちち違いま―――」


「若いっていいよねぇ」


(も、もう~これってセクハラだよね!?)


 波多野のケラケラとした笑い声を聞きながら沙樹は真っ赤になって俯いた。


「あ、そうだ。話は変わるけど、沙樹ちゃんは契約社員の更新どうするのかな?」


「え……?」


 渡瀬の事件で身の回りのことが見えていなかったのか、寿出版での契約が今月で終わることを思い出した。



(そうだった……全然考えてなかったよ)
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