ファインダーの向こう
『そっか、それが沙樹ちゃんの出した答えなんだね。逢坂も沙樹ちゃんも、海外活動への第一歩おめでとう!』


「……すみません、波多野さんにはずいぶんお世話になったのに」


『あー! そういう湿っぽい話は無し! 但し、これだけは約束してよ』


「え……?」


『何年かかってもいいから、二人で無事に寿出版に帰ってくること、いいね?』


 数時間前、いきなりギリシャ行きの飛行機のチケットを渡され、困惑が晴れないまま気がつけばスーツケースを持って空港に降り立っていた。考えずとも無意識に答えが決まっていたことに、沙樹は逢坂の存在の大きさを実感した。


(出発ロビーってここだよね……?)


 沙樹は波多野と電話を切ると、急に昂ぶり始めた心臓を押さえるように胸に手を当てて深呼吸をした。


(ドキドキしてきた……)


 心臓が押しつぶされそうな動悸の原因が、これから起こる出来事への高揚なのか、それとも愛する人と出会う前の昂ぶりなのか、混同しているようだった。


(サントリーニ島かぁ……観光地として人気の場所なら記事になりそうかな? 写真は……逢坂さんに撮ってもらうとして)


「うん、我ながらいいアイディア」


「何がいいアイディアなんだ?」


「っ!?」


 その声の方へ振り向くと、沙樹の目の前に待ち焦がれていた未来が広がった―――。
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