ファインダーの向こう
第二章 闇の中の男
Chapter1
とある夜、その男は夢を見ていた―――。
「ん……」
これが夢なら早く覚めて欲しいと、願わんばかりの暗くて重苦しい夢。
誰かが自分に馬乗りになって、ギラギラとした鋭利なナイフをちらつかせながら口元はいやらしく笑っている。
「め……ろ」
声にならない声を、喉の奥から搾り出しても何も聞こえない。そして、馬乗りになっている黒い影が、何かを囁きながらまさに振り下ろそうとしたその瞬間―――。
「っ!?」
ビクリと全身を震わせ息を呑んで目を見開くと、いつもと変わらない自分の部屋の天井が目に入った。そして、悪い夢を見ていたのだと自覚すると、呑んでいた息を長々と吐き出した。現実に引き戻されてみると、身体がしっとりと汗ばんでいて、額に張りついた髪が不快だった。
「くそ……」
久々に夢見が悪くて、むくりと身体を起こしたその時、右肩に鈍い痛みが走った。顔をしかめて素肌の肩を見ると、そこに痕跡は残っているものの、かなりの年月が経っていると思われる古い刺し傷があった。
古傷が疼く時は、いつも何か嫌なことがある前兆だった。男はベッドサイドにある水の入ったペットボトルを勢いよく煽って、唇の端がらこぼれた水を荒々しく手の甲で拭った。
その時―――。
「ん……」
これが夢なら早く覚めて欲しいと、願わんばかりの暗くて重苦しい夢。
誰かが自分に馬乗りになって、ギラギラとした鋭利なナイフをちらつかせながら口元はいやらしく笑っている。
「め……ろ」
声にならない声を、喉の奥から搾り出しても何も聞こえない。そして、馬乗りになっている黒い影が、何かを囁きながらまさに振り下ろそうとしたその瞬間―――。
「っ!?」
ビクリと全身を震わせ息を呑んで目を見開くと、いつもと変わらない自分の部屋の天井が目に入った。そして、悪い夢を見ていたのだと自覚すると、呑んでいた息を長々と吐き出した。現実に引き戻されてみると、身体がしっとりと汗ばんでいて、額に張りついた髪が不快だった。
「くそ……」
久々に夢見が悪くて、むくりと身体を起こしたその時、右肩に鈍い痛みが走った。顔をしかめて素肌の肩を見ると、そこに痕跡は残っているものの、かなりの年月が経っていると思われる古い刺し傷があった。
古傷が疼く時は、いつも何か嫌なことがある前兆だった。男はベッドサイドにある水の入ったペットボトルを勢いよく煽って、唇の端がらこぼれた水を荒々しく手の甲で拭った。
その時―――。