ファインダーの向こう
第四章 逢坂の写真
Chapter1
『逢坂ちゃぁ~~ん! 今日はご苦労さまね! 渋谷からさっき帰ってきたのかな~?』
日が昇り、街に赤みが差し掛かった頃、逢坂はようやくベッドで微睡み始めていたが、予期せぬ電話で目が冴えてしまった。
「波多野さんって、いつ寝てるんですか? っていうか、さっき画像送ったでしょ、寝かせて下さいよ」
そう言いながら、電話に出なければよかったと後悔しつつ逢坂は起き上がった。ベッドサイドに座り直し、逢坂は煙草に手を伸ばす。裸の上半身が火に照らされると、カーテンも締めずにベッドに入ってしまったのだと気づく。
『うんうん、画像受け取ってプリントアウトして見てたとこ。逢坂の撮った写真をね』
「……は?」
『僕の写真を見る目を侮らないでくれよ? あれは、彼女が自分で撮った写真じゃないだろ?』
「……だったらなんだ?」
『あの写真のアングルの高さからいって、彼女の身長から撮るのは無理だよね~』
波多野は画像を受け取った瞬間に、それが沙樹が撮ったものではないと気がついたのだろう。波多野に送った画像の写真は後ろ襟にたまたまつけていた小型カメラで撮ったものだった。今更ごまかすつもりもさらさらないが、嫌味ったらしく無駄に陽気な声が、逢坂を苛立たせた。
『そっか~結局、土壇場になったら迷いが出ちゃったのか……だから僕が言った通りになったでしょ? やっぱり、お前を行かせて正解だったよ』
「あんたな……あれは、たまたま気が向いたから撮っただけだ」
『とかなんとか言っちゃって~気が向いたにしちゃ、随分ピントずれてるけど? 逢坂らしくない写真だな~』
「その気になれば後ろ向いてようが目を閉じてようが、写真くらい撮れる」
『逢坂ちゃんは見かけより案外善人なんだね~。まぁ、僕は逢坂の上司の前に友達だから、今回の彼女へのお咎めは無しってことにしといてあげる。こっちはネタが手に入ればいいんだし……また会社にも顔出してよ、じゃね~』
波多野の声はいつ聞いても騒々しい。
日が昇り、街に赤みが差し掛かった頃、逢坂はようやくベッドで微睡み始めていたが、予期せぬ電話で目が冴えてしまった。
「波多野さんって、いつ寝てるんですか? っていうか、さっき画像送ったでしょ、寝かせて下さいよ」
そう言いながら、電話に出なければよかったと後悔しつつ逢坂は起き上がった。ベッドサイドに座り直し、逢坂は煙草に手を伸ばす。裸の上半身が火に照らされると、カーテンも締めずにベッドに入ってしまったのだと気づく。
『うんうん、画像受け取ってプリントアウトして見てたとこ。逢坂の撮った写真をね』
「……は?」
『僕の写真を見る目を侮らないでくれよ? あれは、彼女が自分で撮った写真じゃないだろ?』
「……だったらなんだ?」
『あの写真のアングルの高さからいって、彼女の身長から撮るのは無理だよね~』
波多野は画像を受け取った瞬間に、それが沙樹が撮ったものではないと気がついたのだろう。波多野に送った画像の写真は後ろ襟にたまたまつけていた小型カメラで撮ったものだった。今更ごまかすつもりもさらさらないが、嫌味ったらしく無駄に陽気な声が、逢坂を苛立たせた。
『そっか~結局、土壇場になったら迷いが出ちゃったのか……だから僕が言った通りになったでしょ? やっぱり、お前を行かせて正解だったよ』
「あんたな……あれは、たまたま気が向いたから撮っただけだ」
『とかなんとか言っちゃって~気が向いたにしちゃ、随分ピントずれてるけど? 逢坂らしくない写真だな~』
「その気になれば後ろ向いてようが目を閉じてようが、写真くらい撮れる」
『逢坂ちゃんは見かけより案外善人なんだね~。まぁ、僕は逢坂の上司の前に友達だから、今回の彼女へのお咎めは無しってことにしといてあげる。こっちはネタが手に入ればいいんだし……また会社にも顔出してよ、じゃね~』
波多野の声はいつ聞いても騒々しい。