ファインダーの向こう
 沙樹にはひとつ、まだ不可解なことがあった。あのレコーダーに残されていた里浦の言葉が気になって、あれから沙樹は毎日のように何度も聞き返してみたが、沙樹には全く理解することができなかった。


「あの、波多野さん」


「ん?」


「逢坂さんって、今日は会社に来る予定ありますか?」


 波多野は自分のデスクでパソコンとにらめっこしながら、うーんと考えこみながら言った。


「逢坂もねぇ……行動がつかめないやつだからね~なんで? 彼に会いたくなっちゃった?」


 揶揄するように波多野がにんまり笑うと、沙樹はドキリとして焦って首を振った。


「ち、違いますよ、ちょっと聞きたいことがあって……逢坂さん、電話かけてもいつも留守電だから」


「あ~あいつの悪い癖だよねぇ。こっちが連絡取りたい時になかなか繋がんないんだよね……連絡取れたら沙樹ちゃんが会いたがってたって言っとくよ」


「……お願いします」


 波多野に何か勘違いされているような気がしたが、沙樹は気にすることをやめて仕事に取り掛かった。
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