ファインダーの向こう

Chapter2

「あれ、倉野さんまだ残ってるんですか? お先でーす」


「お疲れ様です」


 沙樹の仕事はルミと里浦のことだけではない。依頼されて記事を書いたり、取材に出られそうなスケジュールを組んだり、他社の雑誌を読み比べてみたりとあれこれやっていたら、あっという間に終電間近の時刻になっていた。


(そろそろ帰らないと……)


 終電を逃したとしても、気合いで二時間ほど歩けば家には帰れる。そう思うといつも油断して遅くまで残って仕事をしてしまうのだった。


 さすがに終電近くなると編集部のあるフロアは閑散としてくる。二十四時間、常に社員がいる社内だったが、昼間の騒々しい雰囲気とは打って変わって静かだ。沙樹はデスクの上を片付けパソコンの電源を切ると、最後に一服眠気覚ましのコーヒーを買いに、廊下の突き当たりにある自動販売機へ向かった。

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