ファインダーの向こう
「ふぅ……」


 この時間まで会社にいると、一日が長く感じられる。廊下から死角になっている休憩スペースで沙樹はひとり、温かなコーヒーを両手に包み込んでまったりとしていた。


(編集長、逢坂さんと連絡取れたのかな……)


 会社用の携帯をバッグから取り出し、常に電源が切れているか電波の届かないところにいる逢坂を駄目もとでGPSで検索をしてみる。


(え? ここって……)


 単なる偶然なのか、逢坂の居場所が表示された画面が出ると沙樹は目を瞠った。


 すると―――。


「おい」


「っ!?」


 その時、突如沙樹の頭の上から低い声が降ってきて、沙樹は肩をビクリと跳ねさせると危うく携帯を手元から落としそうになってしまった。


「あ、逢坂さん!?」


 あまりにもリアルタイムな逢坂の登場に、沙樹は驚いて目を丸くする。


「なんだその鳩みたいな顔は」


「だ、だって……いきなり現れるからびっくりして」


 そう言いながら沙樹は、慌てて携帯をバッグに突っ込んでコーヒーを煽った。


「逢坂さんこそ、こんな時間にどうしたんですか?」


「……野暮用」


(もしかして、波多野さんが連絡つけてくれたのかな?)


 ブラックコーヒーのボタンを押している逢坂の背中を見ながら、沙樹がそんなことを思っていると逢坂が取り出し口から缶コーヒーを取り上げ言った。
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