ファインダーの向こう
Chapter2
『逢坂ちゃ~ん! おっはよう~。やっと電話繋がった!』
「波多野さん、俺に盗聴器か何かつけてませんか……?」
時刻は午前七時。
夢見が悪いと決まって出てくるあの黒い影。馬乗りになって鋭いナイフを振り下ろす瞬間、いつも意識が弾けて目が覚める。逢坂は先程までそんな悪夢にうなされていて、目覚めの気分は最悪だった。そしてシャワーを浴びて、鬱々とした気分が晴れた矢先に波多野から電話がかかってきたのだ。
『機嫌が悪いのはまた右肩が疼くからか? その痛みは気のせいだっていつも言ってるのに』
「……それで、なんの用ですか?」
カーテンが締め切られた薄暗い部屋の中、逢坂は冷蔵庫からペットボトルの水を取り出してそれを煽った。
『神山ルミはやっぱり黒……だったんだろ?』
「…………」
『黙ってるってことは黒ってことだね? わかりやすくていいね~』
「うるさい」
上司を上司とも思わない口調で逢坂が言いのけると、波多野は声を立てて笑った。
『面白くなってきたよ、沙樹ちゃんもレコーダーを常備してたなんてね、抜け目ない子だよね~。だから言ったろ、スマートな子だってさ……それで、沙樹ちゃんは里浦にも興味を持ってくれた?』
「あいつに里浦は追わせない。それに、あいつは芸能に向いてない」
『えー! どうして? 僕としては勘の鋭い最強コンビで追ってくれると嬉しいんだけどなぁ』
逢坂のきっぱりとした拒絶に、波多野が子供のように駄々を捏ねると、逢坂は深くため息をついた。
『はは~ん、もしかして沙樹ちゃんを遠ざけるのは、恩師、倉野隆先生の娘だって知ったからかな?』
「な……」
「波多野さん、俺に盗聴器か何かつけてませんか……?」
時刻は午前七時。
夢見が悪いと決まって出てくるあの黒い影。馬乗りになって鋭いナイフを振り下ろす瞬間、いつも意識が弾けて目が覚める。逢坂は先程までそんな悪夢にうなされていて、目覚めの気分は最悪だった。そしてシャワーを浴びて、鬱々とした気分が晴れた矢先に波多野から電話がかかってきたのだ。
『機嫌が悪いのはまた右肩が疼くからか? その痛みは気のせいだっていつも言ってるのに』
「……それで、なんの用ですか?」
カーテンが締め切られた薄暗い部屋の中、逢坂は冷蔵庫からペットボトルの水を取り出してそれを煽った。
『神山ルミはやっぱり黒……だったんだろ?』
「…………」
『黙ってるってことは黒ってことだね? わかりやすくていいね~』
「うるさい」
上司を上司とも思わない口調で逢坂が言いのけると、波多野は声を立てて笑った。
『面白くなってきたよ、沙樹ちゃんもレコーダーを常備してたなんてね、抜け目ない子だよね~。だから言ったろ、スマートな子だってさ……それで、沙樹ちゃんは里浦にも興味を持ってくれた?』
「あいつに里浦は追わせない。それに、あいつは芸能に向いてない」
『えー! どうして? 僕としては勘の鋭い最強コンビで追ってくれると嬉しいんだけどなぁ』
逢坂のきっぱりとした拒絶に、波多野が子供のように駄々を捏ねると、逢坂は深くため息をついた。
『はは~ん、もしかして沙樹ちゃんを遠ざけるのは、恩師、倉野隆先生の娘だって知ったからかな?』
「な……」