ファインダーの向こう
寿出版にて―――。
今日の仕事が無事に終わり、沙樹は先日、逢坂と撮ったあのビルの屋上の朝日の画像をデスクでぼんやり眺めていた。
ここ数日、自粛しているのかルミの浮ついたゴシップネタはあまり聞かなくなった。先週まで各メディアで賑わっていた話題が、こうも忽然と落ち着くとかえって不気味だった。
(ルミ……今頃なにしてるんだろ)
あの時のレコーダーの音源は、ルミが薬物を乱用しているということを示唆するものにすぎない。実際にルミの身体から陽性反応が出たわけでもない。警察でもない沙樹は下手に動くことを自重していた。かと言ってこのまま何もしないわけにもいかず、沙樹はどうすることもできない現状に悶々としていた。
(……考えててもしょうがない)
沙樹が鼻を鳴らしてデスクの上を片付け始めたその時、新垣がきょろきょろしながら姿を見せた。
「あ、倉野さ~ん。お疲れさま~あれ? 波多野さんは?」
「お疲れさま。波多野さんは外出中だよ」
「えっ!? マジですかー。こんなことなら先に電話しときゃよかったかなぁ」
新垣は困ったように頭を掻き、沙樹の方へ向き直るとニッと笑った。
「倉野さんはもう仕事あがりですか?」
「うん、そのつもり」
「じゃあ、その前にちょっと休憩していきませんか? 最上階のカフェテラスで」
新垣の意味深な笑みを、訝しげに思いながら沙樹は頷いた。
今日の仕事が無事に終わり、沙樹は先日、逢坂と撮ったあのビルの屋上の朝日の画像をデスクでぼんやり眺めていた。
ここ数日、自粛しているのかルミの浮ついたゴシップネタはあまり聞かなくなった。先週まで各メディアで賑わっていた話題が、こうも忽然と落ち着くとかえって不気味だった。
(ルミ……今頃なにしてるんだろ)
あの時のレコーダーの音源は、ルミが薬物を乱用しているということを示唆するものにすぎない。実際にルミの身体から陽性反応が出たわけでもない。警察でもない沙樹は下手に動くことを自重していた。かと言ってこのまま何もしないわけにもいかず、沙樹はどうすることもできない現状に悶々としていた。
(……考えててもしょうがない)
沙樹が鼻を鳴らしてデスクの上を片付け始めたその時、新垣がきょろきょろしながら姿を見せた。
「あ、倉野さ~ん。お疲れさま~あれ? 波多野さんは?」
「お疲れさま。波多野さんは外出中だよ」
「えっ!? マジですかー。こんなことなら先に電話しときゃよかったかなぁ」
新垣は困ったように頭を掻き、沙樹の方へ向き直るとニッと笑った。
「倉野さんはもう仕事あがりですか?」
「うん、そのつもり」
「じゃあ、その前にちょっと休憩していきませんか? 最上階のカフェテラスで」
新垣の意味深な笑みを、訝しげに思いながら沙樹は頷いた。