ファインダーの向こう
「何かあったか?」


『こちらでも今夜、里浦が姿を見せると情報を掴んでいたのですが、勘付かれました』


「チッ……」


 髪の毛を掻きあげながら逢坂が小さく舌打ちすると、申し訳なさそうな声で男が言った。


『里浦の代わりと言っては何ですけど、神山ルミが先程現れました。ですが女性の連れがいるようで―――』


「なんだって……?」


『囮の捜査員から先程そのように連絡が入りました。VIP席でなにか話し込んでいる様子だと』


 里浦が逃げたことは逢坂にとって想定内だった。しかし、神山ルミと一緒にいる人物の存在が、逢坂の胸に漣を立てた。


『あと、一時間後にこちらも動きますので』


「了解」


 そう言って逢坂は、慌ただしく電話を切ると、すぐに沙樹の電話番号を呼び出した。


「ったく、電波の届かない所って……」


 R&Wは地下にある。沙樹の携帯が繋がらない事実と、先ほどの男が言っていた神山の連れの人物が重なった。無機質な機械音声をぶち切って携帯をポケットにねじ込むと、こみ上げる焦燥感に逢坂は車のアクセルを踏み込んだ―――。
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