ニセモノ×初恋=??
叩かれた頬が熱くて、唇もなぜかヒリヒリした。

「各務さん!大丈夫!?」

慌てて児玉くんが私の顔を覗きこんだ。

だが。


「児玉くん、各務さんから離れてよ!」

北条さんが児玉くんの手を引いた。

「サイテーだよ、児玉くんをここまで怒らせるようなことするなんて!私だったらそんなことしないのに!」

涙を浮かべながら、一気にまくしたてる。

さっきから何回も聞いているこのセリフ。


―――児玉くんのこと、ホントに好きなんだろうな。


叩かれたところは痛いけど、不思議と怒る気になれなかった。


だけど。


「……手、離してくれる?」


一言、静かにそう言ったかと思うと、児玉くんは凄い勢いで手を振り払った。

「えっ……」

手を振り払われた北条さんは、その行動と児玉くんの表情に、あっけにとられている。




そして児玉くんは自分と私のカバンを持つと、


「行くよ」


と言って、私の手を引いて歩き出した。

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