ニセモノ×初恋=??
「あっ、かがみん!!」

教室前の廊下にクラスの女子がいて、私の姿を見つける。

挨拶代わりに片手を挙げてその子の横をすり抜け、教室に飛び込むと。

対峙してる児玉くんと井ノ上の姿が目に入った。

「何してんの!?」

「各務さん」

「各務」

息を切らして二人の間に飛び込んだ私に、二人とも驚きの表情を浮かべる。

「何って……」

井ノ上が言いにくそうに言葉につまる。

「各務さんにとって、どっちが相応しいか、幸せにできるのか論議中?」

さらり、と高校生らしからぬ恥ずかしいセリフを真面目な顔で言う児玉くん。

なので、

「いやいやいや。そんなしれっとさらっと言われても困る議題なんですけど」

思わずなんでやねん、のかたちで突っ込みをいれてしまうはめになる。

それを見た井ノ上は、

「一応、真面目に話してたんだけど」

と、茶化すなと言いたげな雰囲気を醸し出す。

周りのギャラリーは、そんな二人と加わった私を見守るかのようにキョロキョロと見回している。

「あんな写メが出回る形になったけど、正直、俺はずっと各務をみてきたから、好きだというのは誤魔化しようがないし、それなら正面からぶつかってみようかと」

訳のわからないことをいう井ノ上を、児玉くんが冷めた目で見ている。

「それに、児玉から付き合ってとお願いしたんであって、各務が児玉のことを好きで付き合いはじめたんじゃないなら、俺にも気持ちを向かせるチャンスがあるんじゃないか?」

そう言う井ノ上の顔が、今までに見たことないくらい優しげで。

思わずクラスメート達が、

「うわー、井ノ上、言ったなぁ~」

「沙菜、愛されてる~」

などと囃し立てる。
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