ニセモノ×初恋=??
つかんだのは田神くんで。

その後ろにさっきまで乗っていた電車が走り去るのが見える。


「田神くん!?何してんの、何で田神くんまで降りてんの!?」

あまりにもびっくりして、声をあげてしまう。

「何って、沙菜ちゃんこそ急に降りないでよ、びっくりするだろ!」

「だって、みっともないから…」

「泣いてる女の子をひとりにできるわけないでしょ!」


田神くんの言葉がなぜか、妙なスイッチを押して。


どばっ、とまた涙が溢れてきた。

「もう、女の子扱い、しないでよ……」

「沙菜ちゃん…」

「こんな女々しい自分がイヤだ…」


泣いてる顔を見られたくなくて、田神くんの手を振りほどこうとしたが、力が強くて振りほどけず、さらにそこで男女の差を実感させられた気がして、また涙が出る。


「いいんだよ、泣いたってみっともないなんてことないよ」

優しい、言葉。

「それに、沙菜ちゃんが泣くくらいだから、よっぽど辛かったんでしょ。一人で泣くより、誰かといたほうが気が紛れるよ。思ったこと、言ってみてよ、俺でよければ」

田神くんの一言一言が心に響いて。

涙を止められるはずもなかった。
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