ニセモノ×初恋=??


「また帰るときに鍵をかけるから声をかけてね。夕方までいるから」

「はい、ありがとうございました」


保健室の鍵を開けてもらい、先生にお礼を言った。

児玉くんは保健室に入ると、

「各務さん、ベッドに座ってて」

と言ってから、手慣れた様子で鎮痛剤があるところに行き、薬を開ける。

コップに水を注いで、

「はい、飲んで」

と手渡してくれたので、素直に受け取って薬を飲んだ。

「はい、コップちょうだい」

薬を飲んだのを確認してから、私からコップを受け取った。

「ありがとう」

「どういたしまして」

笑ってから、

「横になったら?」

といってくれた。


最近話してなかったのに、今までみたいにかわらず接してくれたのが嬉しかった。

「うん……ありがとう」

頭痛はまだすぐにはおさまらないので、言葉に甘えることにする。

ちょっと固めの保健室のベッドに横になると、少しは楽な気持ちになった。


児玉くんはというと、私が使ったコップを片付けたり、薬を飲んだのを保健室のノートに書いているようだった。



―――あんなふうに急にニセモノの彼女辞めたのに。

しかも急に避けちゃったのに。

こんなふうに優しくしてくれることが、ありがたい気持ちと申し訳ない気持ちになった。


ちゃんと、話さなきゃ。

田神くんとも約束したし。



そう思うと、急に意識してしまって。
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