ニセモノ×初恋=??
「ありがとうございました~」

にこやかな店員さんから、自分が元々着ていた服が入った紙袋を受けとり、3人でお店を出た。


「じゃ、次はこっち」

連れていかれたのはトイレが併設したパウダールーム。

そこにある全身鏡に映る自分を見て、いつもとの格好の違いに唖然とする。

「あり得ないでしょ……」

ボソッと呟くと、

「えー?凄い似合ってるよ?」

先程のカーキ色で襟にビジューが付いた、膝上5cmのプリーツワンピ、爪先が空いた白のサマーブーツ、水色のリボンが付いたカチューシャ。

それを着た私が鏡に映っている。

「沙菜だってショーパン履くし、脚出すのは平気じゃないの?」

美波ちゃんが不思議そうに聞いてくる。

「あれはパンツ見えないもん!」

それ次第で、羞恥心が違うらしい私。

「じゃあ、見えないように考えて動きなさいよ」

菜緒ちゃんは呆れつつも笑いながらアドバイスしてきた。



「んじゃ、仕上げっ!!」

二人が近付いてきたと思うと。

「わわ、うひぃー!!」


二人のコスメポーチを取り出したかと思うと、あれこれ私の顔を弄りだしたのだった……。




「よしっ、バッチシ!!」

「うん、可愛い~」

「ハハハ………どうも………」

すでに好き放題された私は、力なく笑うしかなかった。

鏡の中には、二人の手によってメイクされた私がいた。

いつもはほぼすっぴんな私が、薄化粧によって不自然じゃない程度に顔色がよくなり、ほんのりピンクに色付いた頬、いつもより長く見える睫毛はマスカラのおかげで。

唇はリップグロスでキラキラしている。


「よし、待ち合わせに行っておいで!」

腕時計を指しながらいう菜緒ちゃんの時計を見ると、10時50分。

ここから待ち合わせ場所までちょうど10分位だ。

「わかった、いってくる!」

どうにでもなれと覚悟を決めた私は、二人に頭を下げた。

「この紙袋は明日沙菜の家に持ってくるから」

美波ちゃんは私の荷物を持ってくれていた。

コクリ、と頷いてから二人に手を振り、待ち合わせ場所に向かった。
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