ニセモノ×初恋=??
すると、カーブに差し掛かったらしい列車が揺れた。

「…っと」

思わずよろけたが、児玉くんの腕で支えられる。

「ありがとー。いつもと違う列車だと、どの辺がカーブかわかんないね」

と児玉くんを見上げる。

「…そうだね」

そう言って私を見る児玉くんの表情が柔らかくて。

一瞬、息を飲む。

そしてふと気付いた。

列車は満員というほどではないが、座るところは空いていないので入り口の横のところに立っていたのだが、私は壁を背中に向ける形で、左側は向かいあう児玉くんの手がつかんでいるのと、座席の柱があり、右手側の入口側は児玉くんの腕がある。


―――これって、周りから見たら壁ドン体勢!?


訳のわからんことを考えてしまう私。


「ん?」

顔をまじまじと見ていたのがばれ、聞いてくる。


「あ……児玉くんの腕のおかげで助かったなぁって」

と言うと、ちょっと驚いた顔したあと、

「そんな格好の各務さんが倒れたら困るし」

と笑う。

「そうだよねー、お見苦しいもの見せちゃう」

私が笑うと、

「……俺が、他のヤツに見られたくないの」

真面目な顔してそんなことを言った。

「後ろから各務さんの脚見るやついるかもと思うと、他のやつを後ろに立たせたくないし」


―――なるほど。だから壁際に私を………って、何言ってんの!?


思わず絶句する。


―――うわ、あ、甘い……。


この雰囲気がとてつもなく甘い。


何だかいたたまれなくなる。


―――こんなに、女の子扱いされることないから、どう反応していいか困る。
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