ニセモノ×初恋＝？？
それからしばらく、嶋井さんの話を聞いた。


前に会った施設にいるとき、１人娘が病気で先に亡くなってしまったこと。

娘婿や孫がいるが、娘婿達に迷惑をかけたくないと密かに悩んでいたこと。

そこの施設もリハビリをするところだから、いつかは出ないといけないと思っていたこと。

「ハナさん、うちの家政婦してくれていたから気にしなくていいって俺の父親が言ったんだけど、だからこそ特別待遇は他の人に示しがつかないって言って聞かなかったんだ」

飲み物を持ってきてくれた児玉くんがそう付け加えた。

「当たり前ですよ、一応少しはわかっているつもりです、前の施設がどんなところか」


ふんっ、と鼻息荒く語る嶋井さん。


「っていうか、嶋井さん、家政婦してたんですね」

「そう、俺が物心ついたらもういたよ。だから長かったんだよね」

「へぇ～」


世間は狭いものである。
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