ニセモノ×初恋=??
「樹さん、少しよろしいですか?」

ふと、先程受付にいた女性が声をかけてくる。

「はい、わかりました。ハナさん、各務さん、ちょっとごめんね」

「うん」

児玉くんが席を離れた。


「樹さん、優しいでしょう?」

嶋井さんに急にそう言われ、

「あ、はい」

反射的にそう答える。


「さっきの話もだけど、樹さんのご両親や柚さんにも、家政婦の頃からよくしていただいて。お世話になりっぱなしで、申し訳ない位なんですよ」

そう話す嶋井さんの表情は、懐かしむような表情で。

けど、次の瞬間には少しその表情が曇る。

「だけど、私が病気で倒れてしまって。お仕事続けられないばかりか、厄介になってしまった。柚さんはお仕事していたけど、樹さんはまだ学生さんで、お世話もたくさんしたかったんですけど…勉強に集中できるようにって……」

嶋井さんの言葉を聞くしか出来なかった。

「自分の身体を治さないとと思っているときに、娘の病気が発覚してね。末期だって。代われるなら代わりたいって考えてばっかりだった」

「………辛かったですね…」

「本当に。どうして、年老いた私じゃなかったんだ、って思ってばかりだったのよ」

嶋井さんは目を伏せる。
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