ニセモノ×初恋=??
「では、お邪魔しました」

嶋井さんと受付にいた女性に頭を下げる。

「また来てね」

嶋井さんが優しい顔で手を振ってくれた。

「はい、またお邪魔します」

そう返事をして、老人ホームの玄関から出た。


外はまだ暑くて、建物との気温差に一瞬、顔をしかめる。

「暑いね」

「ホント暑いね」

そんな話しながら、また駅に向かった。


「各務さん、ありがとう。一緒に行ってくれて」

児玉くんがお礼を言ってきたので、

「こちらこそ、嶋井さんに会わせてくれてありがとう!まさか会えるなんて思わなかった」

と慌てて返事をする。

「前から思っていたんだけど、なかなか機会を作れなくて」

「そうだったんだ」

「まだ各務さんにうちの病院のこと話してなかったから、ハナさんからバレるのもなんだかなぁと思って……」

「それもそうだね」

私が笑うと、児玉くんがほっとした表情をした。



「ところで、このあと……まだ時間いい?」

児玉くんが真面目な顔で聞いてくる。

「うん、大丈夫だよ」

「よかった。あともう1ヶ所行きたいとこあるんだ」


その言葉のあとに、また児玉くんは私の手を握ったのだった……。
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