雨の日は、先生と
第1章 出会い
忌まわしい記憶
「お父さん。」
私はずっと、探していた。
遊んでもらいたくて。
いつもみたいに、高い高いをしてもらいたくて。
「お父さん。」
どうして、見つからないんだろう。
「お父さん。」
寝室にも、リビングにも、キッチンにも、庭にも、トイレにもいない―――
「お父さん。」
幼い私は、最後にお風呂場に向かう。
その扉を、小さな手でゆっくりと開く。
「おと――――― 」
荒い息をしながら目覚める。
この夢、もう何回見ただろう。
あの日から、1日だって見なかったことはない。
力の抜けた手足をゆっくり動かして、ベッドから起きる。
忌まわしい記憶を、振り払うかのように。
「学校、行かなきゃ。」
なぜって、こんな家にいたくないから。
学校に行ったって楽しいことなんてない。
でも、少なくともこの家にいるよりは――
支度をして、朝ごはんは食べないで家を出る。
行ってきます、も行ってらっしゃいもない。
それが、この家。
幸せなんて、父が死んでから一度だって感じたことはない。
私なんて、生まれてこなければよかったと思っている。
将来の希望も、何もない。
誰も私のことなんて、大切にしてくれない――
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