雨の日は、先生と
校長先生が壇上で話をしている。


教職員席は、ひとつ椅子が空いたままで。

それでも、卒業式は進んでいく。


歌を歌うために、壇上に上がる。

そこから眺めても、どんなに目を凝らしても、天野先生の姿はない。


分かっていた。


来るはずないって。


先生は、どんな理由か分からないけれど、休職中で。


来るはずないんだって。



みんなが涙を流す中、私は一人唇を噛みしめていた。



何でだろう。

認めたくなかったんだ。

今日で最後だなんて。

この学校に居られるのが、最後だなんて。



先生にもう、会えないなんて。



泣いたら、認めることになってしまうから。



歌が終わって、答辞も終わって。



会が締められていく。



最後まで、先生は姿を現さなくて。




退場する時に、体育館の外にいるのではないかと思ったのに、どこにも先生の姿はなかった。




もう、会えないんだ。

先生には、もう二度と。

偶然がないかぎり、会えないんだ。




現実が胸に迫ってきて、苦しくなった。




最後のホームルーム。

だけど、担任の言葉なんて耳に入らなくて。

ただひたすらに、昇降口を見つめていたけれど―――――




先生は、来なかった。
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