雨の日は、先生と
思い出した。

入学式の日。



看板の前で代わる代わる写真を撮る、生徒とその両親。



私の入学式には、誰も来るはずなくて。

一緒に写真を撮る人がいるはずもなくて。



ただひとり、立ちすくんでいた。




「どうしたの。」




そう言って声を掛けてくれたのは、天野先生、あなたでしたね。




「一緒に撮りましょう。私がお父さんの代わりでよければ。」




そんなことを言って、私を看板のところまで連れて行った。


戸惑っていて、だけど、なんだか少しうれしかった。


あの時は、名前を訊くこともなくて。


だけど、先生の雰囲気だけは、ほんのりと記憶に残っていたんだ―――






先生は、気付いていたんだね。



私があのときの生徒だって。



図書館で会った時が、初めての出会いだって思っていたのに。



そのずっと前に、先生と私は出会っていた。



先生は、そのときの写真を、こんなふうに大事にとっておいてくれたんだね―――






「先生っ、」







会いたい、先生に会いたい。



あの時のお礼が言いたい。



いつもいつも、私のこと助けてくれて、ありがとうって言いたい。




ずっと前に日誌に書いた、「すきです」という文字。


今は、それだけじゃ足りないよ。


もっともっと、伝えたいことがたくさん―――――



先生に会えてよかったと、伝えたいよ。



先生、来て―――――
< 114 / 119 >

この作品をシェア

pagetop