雨の日は、先生と
第3章 新しい父
新しい父
でもその日、帰るととても、とても悲しいことがあったんだ。
いつものように玄関のドアを鍵で開ける。
すると、中で男の人の声が聞こえた。
お母さんが、家に男の人を連れてくるのはいつものこと。
もちろんいい気はしないけれど、お母さんの勝手だって、そう思ってる。
でも、無視していればいいなんて、そんなの甘えでしかなかったんだ。
リビングを覗くと、仕事中のように濃い化粧をして、着飾った母がいた。
そして、その向こう側には金髪の、怖い感じの人がいる。
「唯、帰ってきたんでしょ?」
そのドアが開いて、いつもより高い声の母が笑顔で私を迎える。
その笑顔に、私の心は切り裂かれそうになる。
あまりにも、作り笑いだと分かる笑顔だから。
その作り笑いが、あなたなんて要らないんだと言っている気がして。
「紹介するわ。この間言っていた人。大路魁人(おおじ かいと)さん。」
記憶を巡らせてはっとする。
もしかして、この人。
お母さんが前に、結婚するって言っていた人じゃ……。
「何?娘いるなんて聞いてないんだけど。」
「え!話したわよ、前に。」
「は?知らねー。」
私と目を合わそうともしないその男。
どうして母はいつも、こうなんだろう。
お父さんとは正反対の人ばかり、選ぶのだろう。
「よろしく、お願いしま、」
「あっち行け。」
冷たい言葉を浴びせられるのには慣れている。
でも、この人がこれからずっと家にいるのだと思うと、重苦しい気持ちになる。
だけど、このときの私は信じていた。
大路さんがこの家に来たことで、少なくとも母からの虐待はなくなるんじゃないかって。
こんなにも人間の怖さを知っているはずだったのに、おかしいね。
でも、やっぱり信じていたかったんだ。
お母さんのことを、お母さんが選んだ人のことを。
お母さんが幸せになれるなら、どんな苦労も厭わない。
このときは、本気でそう思っていたから。
いつものように玄関のドアを鍵で開ける。
すると、中で男の人の声が聞こえた。
お母さんが、家に男の人を連れてくるのはいつものこと。
もちろんいい気はしないけれど、お母さんの勝手だって、そう思ってる。
でも、無視していればいいなんて、そんなの甘えでしかなかったんだ。
リビングを覗くと、仕事中のように濃い化粧をして、着飾った母がいた。
そして、その向こう側には金髪の、怖い感じの人がいる。
「唯、帰ってきたんでしょ?」
そのドアが開いて、いつもより高い声の母が笑顔で私を迎える。
その笑顔に、私の心は切り裂かれそうになる。
あまりにも、作り笑いだと分かる笑顔だから。
その作り笑いが、あなたなんて要らないんだと言っている気がして。
「紹介するわ。この間言っていた人。大路魁人(おおじ かいと)さん。」
記憶を巡らせてはっとする。
もしかして、この人。
お母さんが前に、結婚するって言っていた人じゃ……。
「何?娘いるなんて聞いてないんだけど。」
「え!話したわよ、前に。」
「は?知らねー。」
私と目を合わそうともしないその男。
どうして母はいつも、こうなんだろう。
お父さんとは正反対の人ばかり、選ぶのだろう。
「よろしく、お願いしま、」
「あっち行け。」
冷たい言葉を浴びせられるのには慣れている。
でも、この人がこれからずっと家にいるのだと思うと、重苦しい気持ちになる。
だけど、このときの私は信じていた。
大路さんがこの家に来たことで、少なくとも母からの虐待はなくなるんじゃないかって。
こんなにも人間の怖さを知っているはずだったのに、おかしいね。
でも、やっぱり信じていたかったんだ。
お母さんのことを、お母さんが選んだ人のことを。
お母さんが幸せになれるなら、どんな苦労も厭わない。
このときは、本気でそう思っていたから。