雨の日は、先生と

運命の出会い

夏が過ぎて秋になっても、私は教室へは行かなかった。
このままじゃいけないって分かってる。
でも、教室にはもう戻れない。


外はしとしとと雨が降っている。
私は、「指定席」につく。
本棚の陰になっていて、入り口やカウンターからは見えない場所。
私が、この世界で唯一安心できる場所。


しばらく、そのままぼうっとする。
雨の日は嫌いじゃないけれど、どうしても暗い気持ちになってしまう。

音をなるべく立てないようにして立ち上がると、いつもの小説コーナーに近づいた。

本棚の前で、私は一度目を閉じる。
そして、本の背表紙を目を閉じたまま撫でていく。
これだ、と思った本を手に取って目を開ける。
その日は一日、その本とともに過ごすと決めている。


『四月の魔女へ』


今日の本は、そんな題名だった。


その本を大事に抱えながら、指定席の椅子をそっと引く。
うつむくと落ちてくる長い髪を、片方だけ耳に掛ける。


冒頭の数行を読んで思った。
これは、先生と生徒の恋のお話だ。


そこから、私は読書に没頭し続けていった。
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