雨の日は、先生と
「ごめん、待ったよね!」



駆け寄ると、楓はにっこり笑った。



「全然大丈夫。駅前の喫茶店でいいかな?」


「うん。」


「いこっ!」


友達、ってこんな感じなのかな。

なんだか、ドキドキする。


「私ね、最初から、笹森さんと話してみたかったの。」


「え?」


「私、いつもはみんなに合わせてるけど……、ほんとはね、そんな自分が嫌いなの。」


楓は、心なしか顔を歪めながら言った。

理由は違うけれど、あの教室に居心地の悪さを感じている、楓の気持ちはよく分かる。

私は、彼女の笑顔に、胸の端をぎゅうと掴まれたような気持ちになる。


「だからね、笹森さんが教室に帰ってきたとき、嬉しかったんだ。」


「嬉しかった?」


「うん!なかなか話しかけられなかったけど、でもね、不思議と笹森さんのこと、昔から知ってるみたいな気持ちになるの。」


こんなふうに育ってきたから、私は、どうしても人を疑う癖が身についてしまっていた。
だけど、そんな私にも分かる。

彼女の言葉に、嘘はない。

分かるんだ。



「だから、どうしても。笹森さんに話があって。」


「話って?」


「後で、話すけど……。笹森さんのこと、大事だから、だから、話したいことがあるの。」



その口調に、ただならないものを感じた。
もしかして、悪いことでは、と心を影がよぎる。
一体何のことだろう。


「心配しないで。笹森さん。」


そう言って微笑む楓の表情に、不安はさらに募った。
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