雨の日は、先生と
第2章 走り出す恋
久しぶりの教室
久しぶりに足を向けた教室の廊下。
もう二度と帰ってこないと決心したこの場所に、私は今、立っている。
担任の顔を見たら、冷静ではいられないかもしれない。
それに、私がここに戻ってくることを望んでいる人なんて、一人もいない。
でも、こうするより他に仕方がないんだ。
特別な生徒ではなく、一人の生徒として先生と関わるためには。
私が欲しいのは、「特別」じゃない――
勇気を出して、午後の教室に足を踏み入れた。
まだ昼休みなので、人はまばらだけれど。
一斉に私に視線が注がれるのが分かる。
突然来てしまったのはいいけれど、きっと夏からは席替えだってしているだろう。
私は一体、どこに行ったらいいのか分からなくて、立ち止まってしまう。
浅はかだった。
もう少し考えてから、行動すればいいものを。
「笹森、さん。」
女の子の声で呼ばれて、私は驚いて振り返った。
私の名前を覚えている人がいるなんて、正直思わなかったのだ。
「席替え、くじだったんだけどね。えと、笹森さんの席、ここだよ。私の隣。」
そう言って、その子は柔らかく微笑んだ。
私は信じられない思いで、その子を見つめた。
「いいの?」
「え?」
「私、帰ってきてもいいの?」
気付いたら、ぽろりとそんな言葉が零れ落ちていて。
「あたりまえじゃん!」
その言葉を、ぼうっとした頭の中で聞いた。
「ありがとう。」
小さな声で言ったのに、その声はちゃんと届いたみたいで、その子は軽く頷いて見せた。
どうしてだろう。
こんなに簡単に手に入るものだったなんて。
私だって、ずっとほしかったんだ。
一人は嫌だったんだ。
こんな温もりを、密かに、ずっと欲していた――
背中を押してくれたのは、一回しか会ったことのない先生だなんて、自分でも信じられない。
それに戻ったからって、会えるとは限らない。
でも、あの日から一度も会えない先生に、こうして一歩だけ近づけたことを、自慢したいような気持ちでいたんだ。
もう二度と帰ってこないと決心したこの場所に、私は今、立っている。
担任の顔を見たら、冷静ではいられないかもしれない。
それに、私がここに戻ってくることを望んでいる人なんて、一人もいない。
でも、こうするより他に仕方がないんだ。
特別な生徒ではなく、一人の生徒として先生と関わるためには。
私が欲しいのは、「特別」じゃない――
勇気を出して、午後の教室に足を踏み入れた。
まだ昼休みなので、人はまばらだけれど。
一斉に私に視線が注がれるのが分かる。
突然来てしまったのはいいけれど、きっと夏からは席替えだってしているだろう。
私は一体、どこに行ったらいいのか分からなくて、立ち止まってしまう。
浅はかだった。
もう少し考えてから、行動すればいいものを。
「笹森、さん。」
女の子の声で呼ばれて、私は驚いて振り返った。
私の名前を覚えている人がいるなんて、正直思わなかったのだ。
「席替え、くじだったんだけどね。えと、笹森さんの席、ここだよ。私の隣。」
そう言って、その子は柔らかく微笑んだ。
私は信じられない思いで、その子を見つめた。
「いいの?」
「え?」
「私、帰ってきてもいいの?」
気付いたら、ぽろりとそんな言葉が零れ落ちていて。
「あたりまえじゃん!」
その言葉を、ぼうっとした頭の中で聞いた。
「ありがとう。」
小さな声で言ったのに、その声はちゃんと届いたみたいで、その子は軽く頷いて見せた。
どうしてだろう。
こんなに簡単に手に入るものだったなんて。
私だって、ずっとほしかったんだ。
一人は嫌だったんだ。
こんな温もりを、密かに、ずっと欲していた――
背中を押してくれたのは、一回しか会ったことのない先生だなんて、自分でも信じられない。
それに戻ったからって、会えるとは限らない。
でも、あの日から一度も会えない先生に、こうして一歩だけ近づけたことを、自慢したいような気持ちでいたんだ。