雨の日は、先生と
教室へと向かう曲がり角、早足で歩いていたら、曲がってきた人と思い切りぶつかった。


「すみま、」


すみません、と言おうとして、息が止まった。

その人も、驚いたように立ち尽くしていた。

切ない目と、ひそめられた眉。

その綺麗な瞳に、限りない悲しみを湛えて、先生は私を見つめていた。



そして、何も言わないまま。



私と先生はすれ違った。



もう、関係ないんだ。

先生とは、関係ない―――



思わず振り返ると、同じように振り返った先生と、また一瞬目が合った。

その手に握られているチラシは、私がはがしたのと同じものだろう。



もう、遅かったんだ。



先生を巻き込みたくなかったのに。



先生はすでに、私のせいで、こんなにも惨めな思いをしなければならなくて。



「ごめん、先生っ。ごめんなさい……。」



私が、先生を好きにならなければ。
それなら、こんな思い、しなくて済んだのにね。



先生の、切ない瞳が忘れられなかった。



きゅっと結ばれた、その口元も。




それでもやはり、先生のことが好きで、好きでたまらなかった。

何を言われても。

周りの目なんて、どうでもよくて。

ただ、先生のそばにいたかった。

それだけだったのに―――
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